ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 12 年ごろになった姫は、はっとするほど美しい娘に なりました。 姿が美しいだけでなく、姫は心のやさしいしい人 でした。 姫が二十才になった春のことです。 「姫、義意はわしがほれた男じゃ。この人なら、 姫を幸せ…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 11 「でも、また会えるでしょ?」 「ええ、姫さま。来年……また会いましょうね。この 鈴のことは……だれにも……ないしょよ。……姫 のおとうさまにも……ね」 とぎれとぎれでしたが、姫は桜の花とお話するこ とができました…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 10 「こんにちは。私、小桜よ」 「……?」 「はじめまして。私、小桜です」 「……小桜?」 桜の花がとまどっている様子が、姫にもわかりました。 「桜さん、聞こえますか?」 姫は、桜の花に話しかけました。 すると、…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 9 次の日。 姫は桜の木の下へ行き、桜の鈴を七回ふってみま した。 「リーン・リーン・リーン…」 すんだ音色が、あたりにひびきわたります。 「昨日、桜の花が話していたことは、本当かしら?」 姫は、桜の花に話しか…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 8 「そうそう、小桜姫さまはね、…ふしぎな鈴を…もっ ているですって」 「ふしぎな鈴って…どんな鈴なの?」 「その鈴はね、桜の花びらの…鈴でね」 「みんな聞いた? 桜の花びらの鈴…ですって」 「その鈴を…靜かにリーン…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 7 姫が十才になった春のある日。 姫は庭へでて、満開の桜をじっとながめていました。 そして、おとうさんからもらった桜の鈴を、何回かふ ってみました。 「リーン・リーン・リーン…」 姫が七回鈴をふった時、どこから…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 6 一つは、桜の花びらで囲まれた中に、小さな鈴が 入っていました。 「リーン・リーン・リーン」 鈴虫が鳴いているような、すんだ音色の鈴でした。 姫はこの鈴がお気に入りで、なくなるまで大切にし ていました。 もう…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 5 「ねえ、おとうさま。花はいくつ咲いているの?」 「ニ百くらいは咲いているだろう」 おとうさんはうれしそうにいいました。 姫が七才になった春のある日。 庭の桜が満開になりました。 例年になく、美しい桜でした…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 4 「姫、きてごらん。椿の木にめじろがきているよ」 庭へ小鳥が来ると、おとうさんは小鳥の名前を教え てくれます。 姫は、小鳥の名前や鳴き声を、自然におぼえました。 そして、小鳥たちと仲良しになりました。 夏の…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 3 「ホ…ケキョ、…ケキョ」 「ホーホ…、…ケキョ」 しかし、うぐいすはなかなかうまく鳴けません。 「うぐいすさん、がんばってぇ」 姫は、心の中でうぐいすをおうえんしました。 「ホーホケキョ、ほーほけきょ」 しばら…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 2 姫が生まれた時、庭の桜が美しく咲いていたので、 「小桜」と名づけられました。 やしきの広い庭には、桜・梅・椿など、たくさんの木 が植えてあります。 その木へ、いろいろな小鳥がやってきます。 梅の花が何輪か…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 1 今からおよそ五百年前。 小桜姫は、相模の国・鎌倉で生まれました。 姫の生家は、大江といいます。 大江家は、大昔からずっと続いた旧家でした。 大江家には男の子が一人もなく、こどもは姫だけ。 大江家にとって、…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 プロローグ 2 「今年もきれいに咲いたのね」 かなは、そっと花のにおいをかぎました。 桜の花の香りが、あたりにぷーんとただよいました。 大好きなおとうさんがなくなった年の春。 かなはおとうさんといっしょに、この丘へ桜の花をみ に…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 プロローグ 1 小高い丘にのぼると、目の前に南アルプスの山々 が美しくみえます。 山深いこの町にも、ようやくあたたかな春がやって きました。 丘の上の桜が、今年も美しく咲きました。 かなは丘へ着くと、桜の木の方へ走って行きました…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 23 それから五百年がすぎました。 守屋山のふもとでは、何万本にもふえた福寿草が、 春の光をあび、美しく咲いています。 その中に一本、福の生まれ変わりの花が咲いてい ます。 その福寿草は、守屋山にまだ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 22 「わしは守屋山に住んでいる明神じゃ。二人とも福に 会えて、本当に良かったのぅ。長者夫婦よ、福を大切 に育ててくれて、ありがとう。感謝しているぞー。そこ に咲いている黄金色の花は、福寿草というの…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 21 「とうちゃん、かあちゃん。今年も忘れずに私に会 いにきてくれたのね。うれしいわ。私ね、明神さま にお願いして、とうちゃんがみたいといっていた黄 金色の花にしていただいたの。きれいな花でしょ。 今…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 20 福がたおれていた場所にたどりついた時、二人は 「あっ」と大声をあげました。 わずかに残った雪の中に、長者が・福が・村の人 々が、あんなにみたいと思った黄金色の花が、一 本咲いていたのです。 黄金…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 19 長者は、たくさんの宝物を、使用人や村の人々に、 おしげもなくわけ与えました。 大切なこどもをなくしてしまった長者には、宝物な どもう何の価値もなかったのです。 長者は、福がたおれていた場所にも、…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 18 「福や、福や。目をさましておくれ」 「福、なぜ守屋山へなど行ったの?」 大切なこどもをなくした夫婦は、気もくるわんばか りに、なげき悲しみました。 「明神さま、お許し下さい。せっかく授けていただ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 17 「もしかして、守屋山へ行ったのでは・・・」 小雪のちらつく中を、大がかりな山狩りが、一晩中 おこなわれました。 でも、福をみつけることはできませんでした。 「福や、福や。どこへ行ってしまったの」…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 16 福は、枯葉の上に腰をおろしました。 そして、いつの間にか、うとうととねむってしまった のです。 福の体の上に、少しずつ少しずつ雪が積もってい きました。 「福や、福や。おきるのじゃ。こんな所でね…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 15 どこをさがしても、黄金色の花など、ひとつもありま せん。 枯葉が一面に落ちているだけでした。 福の足音と、鈴の音だけが、静かな山の中にひび きわたります。 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 …

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 14 「黄金色の花って、どんな花かしら。どんな形をして いるのかしら」 福の頭の中は、黄金色の花のことでいっぱいでした。 「黄金色の花、黄金色の花。黄金色の花がみたいなぁ」 そういいながら、福は細い急…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 13 それから一年が過ぎました。 山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってき ました。 ある日、福はたった一人で留守番をすることにな りました。 大勢の人に囲まれて生活している福には、珍しい ことでし…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 12 とうちゃんも若い時、黄金色の花がみたくて、毎年 守屋山に登って、花をさがしたものだ。しかし、な ぜか一本も見つけることができなかった。村の人は、 だれも黄金色の花をみたことがないそうだ。一度で …

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 11 「かあちゃん、なにかお手伝いすることない?」 福は家の手伝いも、よくやりました。 「福ちゃん、あそぼ」 近所のこどもたちも、おおぜい遊びにきます。 やしきの広い庭は、いつも近所のこどもたちで、い…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 10 「ほら、みて。福が笑っているわ。かわいい笑顔ね」 「福がね、はいはいできるようになったのよ」 「つかまりたちができるようになったわ」 「福が歩けるようになったの。ほら、みて。上手に歩 けるでしょ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 9 「この子に、たくさんの福が授かりますように」 長者は女の子に、「福」となづけました。 「長者さまに、かわいい女の子が授かったそうだよ」 「だんなさまも奥様も、どんなにうれしいことか。本 当によかっ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 8 女の子はつぶらなひとみで、じっと奥さんの顔をみ ています。 そして時々にこっとほほえみます。 「なんて清らかな目をしているのでしょう。だんなさ ま、この子を我が家で育ててあげましょうよ」 「そうだ…