鹿になった観音さま


   鹿になった観音さま9


「裏山に、こんなものが落ちてい
ました」
「これは、観音さまではないか」
「はい、和尚さま。裏山へ行くと、
大きな黄金色の鹿が、わしにおそ
いかかってきました」



「なに? 黄金色の鹿だと。
この世に、そんな鹿がいるのか」
「いません。いや、いないと思い
ます。わしも、初めてみました。



その鹿は、ぴかっぴかっと光った
美しい黄金色の鹿でした。
しかも、びっくりするような大き
な鹿。
その鹿が、突然わしにおそいかか
ってきたのです」



「鹿が?」
「はい。わしは、その鹿を、弓で
いとめました」
「いとめた鹿は、どうしたのじゃ」


            つづく



     昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100214#p1



     初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100207#p1



「鹿になった観音さま」は、信州の伊
那谷にある「立石寺」に伝わっている
話をヒントにして、みほようこが書い
たもの。