火とぼし山


    火とぼし山41


次郎の見合いの話など、きよは聞
きたくありません。
でも、気になってしかたがなかっ
たのです。



「うん。した」
「次郎さんは、その人と会わない
といったのに、どうして会ったの」
「きよちゃん、ごめん。
おれ、主人にことわりきれなかった
んだ」
次郎が、すまなそうにいいました。



「やっぱり、次郎さんはその人と
会ったのね。
次郎さんは人がいいから、ことわり
きれないだろうなと思っていたわ。
で、どんな人だったの」



「とてもおもしろい人だった。
会っている間、二人とも笑いっぱ
なしだった。
その人ね、大きな農家の一人娘な
んだって。
おらに、養子にきてくれないかと
いうんだ」
次郎は、見合いをした娘のことを
話してくれました。


            つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100419#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。