火とぼし山49
「何の音だろう」
手長と足長は、あたりをみわたし
ました。
月あかりに照らされてみえたもの、
それは湖を泳いでいる娘の姿でした。
娘は、頭に荷物をのせ泳いでいます。
「どこの娘じゃろ」
近づいてみると、きよでした。
「誰かと思ったら、きよか。
湖に氷がはれば、氷の上を歩く。
水がぬるめば、湖を泳いで渡る。
ほんとにむてっぽうな娘じゃのぅ。
大の男だって、湖を泳いで渡る人は、
数えるほどしかいない。
それなのに、かよわいおなごが、こ
んな夜中に、湖を泳いで渡るなんて
信じられん」
足長が、あきれたようにいいました。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100427#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。