火とぼし山


   火とぼし山50
 

「私には、きよの気持が、よくわ
かるわ。
危険をおかしてまでも、一分でも
早く、大好きな人に会いたいとい
う気持。男のあなたには、わから
ないでしょうね」
手長がいいました。



「わしにだって、わかるさ。
でも、こんな夜中に、湖を泳いで
渡るなんて危険すぎる。
深みにはまったら、どうするんじゃ。
諏訪湖には、深い淵になっている
場所があるからのぅ」
足長が、心配していいました。



「達者な泳ぎだから、深みにでも
はまらない限り、大丈夫でしょ。
魚が泳いでいるような、みごとな
泳ぎね」
きよの泳ぎをみて、手長が感心し
たようにいいました。


          つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100428#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。