童話「風の神様からのおくりもの」


童話「風の神様からのおくりもの」4


「いいんじゃよ。あの子が幸せになってくれれ
ば・・・・・・。わしはそれでうれしいのじゃ。
それより、あの子が苦しみに負けず、自分の使
命をまっとうしてくれるといいがのー」
風の神さまが縁側においてきたまゆ玉は、どう
も普通のまゆ玉ではないようです。



風の神さまは、守屋山でかいこをかっていました。
かいこからは、毎年沢山のまゆ玉がとれました。
真っ白いまゆ玉です。



風の神さまが住んでおられる守屋山には、こんな
いいつたえがありました。
守屋山では、四百年に一度、それもたったひとつ
だけ、黄金色に輝く小さなまゆ玉がとれるといわ
れています。
この地方に住んでいる人々のやさしい気持が、黄
金色のまゆ玉になるのだそうです。



風の神さまは、四百年にひとつだけとれる黄金色
のまゆ玉を、とても大切にしておりました。
そのまゆ玉は、たとえ風の神さまがもうひとつほ
しいと思っても、なかなか手にはいらない貴重な
まゆ玉だったのです。



とくにこのごろは、人々にやさしさがなくなり、
「自分さえよければ、他人はどうなってもよい」
という人がほとんどです。
だから、二千年くらいたたないと、黄金色のまゆ
玉は手にはいらなかったのです。
黄金色のまゆ玉は、この地方に住んでいる人々の
やさしさをしめす、鏡のようなものでした。


       つづく



童話「風の神様からのおくりもの」は、みほようこ
の初めての童話集・「風の神様からのおくりもの」
に、収録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話