笛の音よ、永久にひびけ


  笛の音よ、永久にひびけ6


この丘での楽しかった思い出が、まるで昨日
のことのように、かえでにはなつかしく思い
出されました。
「とうとう、わしも切られてしまうのか」
かえでは、さみしく思いました。



「人間たちは、なぜ森の木を切るのだろう。
森では、木や草や動物たちが、仲良く助け合
って暮らしているのに」
かえでは、大きなため息をつきました。



「この森に住んでいる仲間たちは、これから
どうなるのだろう」
かえでは、仲間たちのことが心配でたまりま
せん。
「うわさでは、この森でスキー大会が行われ
るとか。



その会場を作るために、森の木をたくさん切
るそうだ。なぜ人間たちは私たちをみごろし
にするのだろうか」
かえでには、人間の気持がわかりませんでした。


         つづく



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、スキー
大会の会場をつくるためにきりたおされた、
信州志賀高原の樹令200年の楓のお話。



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。