福寿草になった少女


 福寿草になった少女5
   

「リーン・リーン・リーン」
清らかな音色が、あたりにひびきました。
「なんで、こんなかわいい子を、おきざり
にするのじゃ」 
「きっとわけがあったのでしょう。
こんなかわいい子ですもの、おかあさんだ
って、てばなしたくなかったでしょうに」



かわいいこどもをてばなすなんて、こども
の授からない夫婦には、考えられないこと
でした。
「それにしても、かわいい子じゃのぅ」
長者はなれない手つきで、そっと女の子を
だきあげました。
女の子は長者の顔をみて、にっこりほほえ
みました。



「おう、おう。よい子じゃのぅ」
長者は目を細め、女の子をあやします。
「ねぇ、私にもだかせて」
奥さんは女の子を受けとると、やさしくほ
おずりしました。
すると、お乳の甘いかおりが、ぷーんとし
ました。


           つづく



童話「福寿草になった少女」は、守屋山の明
神様にまつわる、福寿草と少女の話。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話。




童話「福寿草になった少女」は、みほようこ
の二冊目の童話集「竜神になった三郎」に収
録されています。



童話集「竜神になった三郎」は、2004年
4月、諏訪大社御柱祭にあわせ「鳥影社」
から発行されました。




http://www.bk1.jp/product/02434727