福寿草になった少女10
それから一年が過ぎました。
山深い村にも、ようやくあたたかな春がやっ
てきました。
ある日、福はたった一人で留守番をすること
になりました。
大勢の人に囲まれて生活している福には、珍
しいことでした。
一人で留守番をしているうちに、福は守屋山
に咲いているという黄金色の花が、むしょう
に見たくなりました。
「福や、一人で遠くへ行ってはいけないよ」
いつも両親にいわれていたのに、福は一人で
守屋山へ行ってみようと思ったのです。
福は、お守りの鈴を首にかけると、守屋山に
むかって、細い急な道を登って行きました。
福が歩くたびに、「リーン・リーン」と、鈴
の良い音がします。
「黄金色の花って、どんな花かしら。
どんな形をしているのかしら」
福の頭の中は、黄金色の花のことでいっぱい
でした。
つづく
童話「福寿草になった少女」は、守屋山の明
神様にまつわる、福寿草と少女の話。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話。
童話「福寿草になった少女」は、みほようこ
の二冊目の童話集「竜神になった三郎」に収
録されています。
http://www.bk1.jp/product/02434727