竜神になった三郎


   竜神になった三郎4


ななかまどの実が橙色になった、秋のある日。
三郎は、遠くの町へ用たしにでかけました。
その町には、大きな美しい湖、諏訪湖があ
ります。
三郎は、久しぶりに諏訪湖によってみました。



魚でもとっているのでしょうか。
湖には、小さな舟がいくつかういていました。
「なんてきれいだろう」
秋の日をあび、湖はきらっきらっと輝いてい
ます。



三郎がぼんやり湖をながめていると、
「何をみていらっしゃるの」
後でかわいい声がしました。
三郎が後をふりむくと、はっとするほど美し
い娘が立っていました。



真っ黒な長いかみ・色白な顔・赤いくちびる・
澄んだひとみ・すらりとした体。
娘は、桃色の着物をきていました。
諏訪湖の精のような、美しい娘でした。
三郎は、今までこんな美しい娘を、みたこと
がありません。


        つづく



童話「竜神になった三郎」は、信州の諏訪
地方に伝わっている「竜になった三郎」を
ヒントにして、みほようこが書いた物語。



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
諏訪大社御柱祭にあわせて、「鳥影社」
から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。
すてきな挿絵です。