竜神になった三郎


  竜神になった三郎13


「私は幼い時から、太郎兄さんにも次郎兄
さんにも、かわいがってもらいました。
兄たちがなぜあんなひどいことをしたのか、
私にはわかりません。
兄たちにつき落とされた時は、本当にびっ
くりしました。しかし・・・、私は兄たち
をにくむ気にはどうしてもなれません」
三郎は、そう答えました。 



「おまえは本当に不思議な男じゃのぅ。
そうだ、おまえを地の国の王子に迎えよう」
「えっ、私が地の国の王子ですって?」
「そうじゃ。人を少しも疑うことを知らない
おまえを、この国の王子にしてあげよう。



じつは王様には、あとつぎがなくて、困って
いた所じゃ。これからおまえはこの国でのん
びりと暮らすがよい」
そういうと、神様はどこかへ行ってしまいま
した。



「いやー、困ります。私には妻がいます。
私の帰りを、今か今かと待っています。だか
ら私はどうしても家に帰らなくてはなりません」
三郎は、大声でさけびました。


           つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。