火とぼし山


   火とぼし山7


しばらくすると、西の山に、ぽっと火
がともりました。
次郎と約束していなければ、みのがし
てしまいそうな小さな火でした。



「あっ、次郎さんだ。約束通り火をた
いてくれたのね。ありがとう。
次郎さん。今、行くからね。待ってい
てね」
きよは、遠くにみえる火をめがけて、
諏訪湖のまわりを足早に歩きました。



しかし、歩いても、歩いても、なかな
か次郎の所へたどりつけません。
小さな火をみてから一時間後。
やっと、次郎の所へたどりつきました。
家を出てから、どのくらいの時間がた
っているのでしょうか。



「次郎さん。会いたかったわ」
きよは、次郎にかけよりました。
「きよちゃん。ほんとにきてくれたの
だね。ありがとう。おらも、きよちゃ
んに会いたかった」
次郎は、笑顔できよを迎えました。


              つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。

「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。