火とぼし山


   火とぼし山15


「ここへくる途中、湖の氷の上で、娘
に会ってのぅ」
「湖の上で、娘さんに?」
「湖の氷は、まだ薄い。娘が湖に落ち
たら大変だと思って、そっと後をつけ
たのじゃ。



娘は、青年に会うために、山の中へは
いっていった。
うらやましいくらい仲のいいカップ
だったよ」
明神さまは、奥さんに娘の様子を話し
ました。



その夜。
明神さまは、けらいの手長と足長をよ
びました。
「明神さま。何かご用でございますか」
「早速じゃが、二人に頼みたいことが
あるのじゃ」



「なんでございましょう」
「実は・・・夜中に、湖の氷の上を歩
く娘がいるのじゃ」
「氷の上を歩く娘? 明神さま。湖の
氷は、まだ薄い。氷の上を歩くなんて、
危険です。こんな寒い日に、湖に落ち
れば死んでしまいますよ」
足長がいいました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。