火とぼし山


    火とぼし山16


「だから、娘が湖に落ちないように、
二人にみはっていてほしいのじゃ」
「明神さま。娘は、なぜ氷の上を歩く
のでしょう。しかも、夜中に・・・」
手長が聞きました。



「愛する青年に、会うためじゃ。
湖の氷の上を歩けば、短時間で青年の
所へ行ける。娘が毎晩青年に会いに行
くとは思わないが、娘をみはっていて
ほしい。
手長と足長に頼んでおけば、安心じゃ
からのぅ」



「明神さま。その娘は、どこに住んで
いるのですか」
「どこに住んでいるか、わしもしらん。
今夜会ったばかりだから。でも、湖の
東側に住んでいることだけはたしかじゃ」
「じゃあ、調べてみましょう」
「手長、足長。娘のこと、たのんだぞ」
明神さまは、手長と足長に、娘のことを
お願いしました。


             つづく



おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。