火とぼし山


  火とぼし山17


一方、きよと次郎は、いつものように
一晩中語りあかしました。



次の朝。
きよは、さみしそうに家にもどってい
きました。
次郎は、きよのさみしそうな姿をみる
たびに、心が痛みます。
でも、住みこみで働いている次郎には、
どうすることもできませんでした。



湖に氷がはっている間、二人は何度か
会いました。
五日に一度は会っていたでしょうか。



第四章 一ヶ月に一度のであい


寒さの厳しい諏訪にも、ようやくあた
たかな春がやってきました。
諏訪湖の氷も、とけはじめました。



今日は、次郎と会う日。
きよは、湖のまわりを歩いていくこと
にしました。
湖のまわりを歩くと、氷の上を歩く何
倍もの時間がかかります。


          つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。