火とぼし山


   火とぼし山18


きよは、一分でも早く、次郎の所へ行
ける方法はないものかと考えました。
「湖を泳いで行ったらどうだろう」
そう思ったきよは、湖の中へ手を入れ
てみました。
氷がとけ始めた湖の水は、びっくりす
るほど冷たく、泳いでいくことは無理
でした。



きよは、次郎のことを考えながら、湖
のまわりを足早に歩いていきます。
しかし、歩いても、歩いても、なかな
か次郎の所へたどりつけません。
何時間もかけ、やっと次郎の所へつき
ました。



「次郎さん。今夜は、湖のまわりを歩
いてきたの。だから、遅くなってしま
ったわ。次郎さん。会いたかった」
きよは、次郎にかけよりました。
「きよちゃん。遠い所をご苦労さま。
待っていたよ」
次郎は、笑顔できよを迎えてくれました。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。