火とぼし山


    火とぼし山20


「うまいっ」
次郎は、こんなうまい酒を飲んだのは、
初めてでした。
きよちゃんと会うたびに、持ってくる
酒が熱くなっている。
酒だけでなく、きよの自分に対する思
いが日ごとに強くなっていることに気
づき、次郎はとまどいました。



きよちゃんの気持は、うれしい。おら
も、きよちゃんが大好きだ。
でも、次郎は、心のどこかで不安を感
じていました。何に対する不安なのか、
次郎にもわかりませんでした。



次郎は、きよのそばにいると、ほっと
します。
そして、心がなごみました。
「きよちゃんて、ふしぎな人だな」
次郎は、きよに会うたびにそう思います。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。