火とぼし山


   火とぼし山27


「とうちゃん。私たち、けんかは一度
もしたことはないわ。
次郎さんは、今野良の仕事で忙しいの。
だから、会えないんだって」



「そうか。それならいいけれど。この
ごろ元気がないから、どうしたのかな
と心配していたのだよ。
仕事がひまになれば、また次郎君と会
えるさ」
おとうさんは、そういってきよをなぐ
さめました。



「とうちゃん。ごめんね。ほんとは、
仕事がひまになっても、次郎さんとは
月に一度しか会えないの。
私、さみしい」
きよは、心の中でそっとつぶやきました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。