火とぼし山


   火とぼし山29


きよは、次郎の笑顔を思いうかべなが
ら、湖のまわりを足早に歩いていきま
す。
一カ月ぶりに会えると思うと、何時間
もかかる遠い道のりも、暗い夜道も、
きよは少しも苦になりませんでした。



何時間もかけ、やっと次郎の所へつき
ました。
「次郎さん。会いたかったわ」
「きよちゃん。遠い所をご苦労さま。
一カ月は、ほんとに長かったね」



次郎は、笑顔できよを迎えてくれまし
た。
二人は、一カ月間のできごとを、夢中
で語りあいました。



しばらくして、次郎がいいました。
「きよちゃん。おこらないで聞いてく
れる?
「何なの、次郎さん」


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。