火とぼし山


  火とぼし山30


「きよちゃんには、今までなんでも話
してきた。おれ、かくしごとをしたく
ないので、おもいきって話すね。
きよちゃん、おこらないでね」
次郎は、再びねんをおしました。



「実は、十日ほど前、主人から姪と会
ってほしいといわれた」
「見合いをするということ?」
「そうらしい。でも、おらは、その場
でことわった」
「次郎さん。ことわったなら、そんな
話しなくてもいいのに」
きよは、次郎の気持がわかりませんで
した。



「ことわったけれど、どうしても姪と
会ってほしいというんだ」
「次郎さんは、その人と会うつもりなの」
「いや、会うつもりはない。
おらには、きよちゃんという大事な人
がいる。だから、会うつもりはない」
次郎は、きっぱりいいました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。