火とぼし山


    火とぼし山31


でも、次郎さんは、はっきりいやとい
えない人だから、ことわりきれずにそ
の人と見合いをするのだろうなと、き
よは思いました。



次の朝。
「ねぇ、次郎さん。今度はいつ会える
の」
きよが、聞きました。
「今、仕事が忙しい。だから、今度会
うのは、一カ月後かな」



「一カ月後? そんなのいや。
私、毎日でも次郎さんに会いたい」
「きよちゃん。毎日なんて無理だよ」
「次郎さんは、私と会うのがいやにな
ったんじゃないの」
きよが、さみしそうにいいました。
「そんなことはない。おらは、きよち
ゃんと会うのを楽しみにしている」


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。