火とぼし山


   火とぼし山36


次郎さんが、その人を好きになったら
どうしよう。
私は、次郎さんにみむきもされなくな
ってしまうのだろうか。
きよは、不安な気持で毎日をすごしま
した。こんな不安な気持になったのは、
初めてでした。



十日がすぎました。
明神さまは、いつものように村内のみ
まわりに行きました。
広い桑畑を通りかかると、若者が桑の
葉をつんでいました。



「どこの若者だろう」
若者の顔をみた明神さまは、あっと声
をあげそうになりました。
きよの大好きな人、次郎だったからです。



その時。
「次郎さーん。私よー」
どこからか、女の人の声が聞こえてき
ました。


               つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という伝説があ
ります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。