火とぼし山44
すると・・・。
「あっ、次郎さんだ。
約束通り、今日も火をたいてくれたのね。
ありがとう、次郎さん。
今行くからねー。待っていてねー」
きよが、大声でさけびました。
みると、向こう岸の山に、小さな火が
ともっています。
「あの火が、合図なのか。それにして
も、小さな火じゃのぅ」
「きよは、あの火がともるのを、待っ
ていたのね」
手長と足長は、小さな火をめがけて泳
いでいくきよの姿を、いつまでもみて
いました。
「無事に湖をわたり終えますように」
と祈りながら。
つづく
「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。