火とぼし山


    火とぼし山45


「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早か
ったね。どうしたの」
「次郎さん。私、湖を泳いできたの」
「えっ、湖を?」
次郎は驚いて聞きました。
みると、きよの髪から、しずくがぽた
ぽたとたれています。



「私、一分でも早く、次郎さんに会い
たかったから、湖を泳いできたの」
「きよちゃんが、泳ぎがうまいという
ことは、おらも知っている。
でも、夜中に湖を泳ぐなんて危険だ。



深みにはまって、おぼれたらどうする
の。死んでしまうよ。
きよちゃん、お願いだから、むちゃな
ことはしないでね」
次郎が心配していいました。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。