火とぼし山


    火とぼし山46


「大丈夫、次郎さん。気をつけて泳ぐ
から。今夜は明るかったから、泳ぎや
すかったわ。
月に照らされて、湖の水がきらきら光
っているの。とてもきれいだったわ」



「いくら月明かりで明るくても、昼間
とはちがうんだよ。きよちゃん」
「たとえ、真っ暗でも、次郎さんがと
もしてくれる火をめあてに泳いでくる
から平気よ」
きよがいいました。



次郎は、きよのことばを聞き、自分が
ともす火が、きよにとってどんなに大
切な火であるかということを知りました。
「きよちゃんは、おらがともす火をめ
あてに、無事にここへたどりついてい
るのだな」と、次郎は思いました。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。