火とぼし山


    火とぼし山52


次郎は、きよの話をほとんど聞いてい
ませんでした。
そんな次郎の様子をみて、きよが聞き
ました。
「次郎さん、どうかしたの」と。
「いや、なんでもない」
次郎はそう答えました。



次の朝。
「次郎さん。今度はいつ会えるの」
きよが、いつものように聞きました。
「今度会うのは、秋のとりいれが終わ
ってからかな」
「そんなのいや。せめて、月に二度は
次郎さんと会いたい」



「今仕事が忙しいから、無理だよ」
「次郎さんは、私と会うのがいやにな
ったんじゃないの」
きよがさみしそうにいいました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。