火とぼし山


   火とぼし山53


「そんなことはない」
「じゃあ、見合いをした人と会うため」
「その人とは会っていない」
次郎が、ぶっきらぼうにいいました。
こんな次郎をみたことがなかったので、
きよはびっくりしました。



「次郎さん。うそをいわないで。
私にはわかるわ。次郎さんが、その人
と会っているということが」
「・・・・・・」
「次郎さん。その人と会っているでし
ょ?」



「きよちゃん、なぜわかるの」
「次郎さんが、大好きだから。
次郎さんのことは、よくわかるの。
その人、たんぼや畑へ会いにくるでしょ」
次郎は、何もいえませんでした。
ほんとうのことだったからです。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。