赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花5


奥がたは、お万。
心のやさしい、美しい人でした。
お万は、盛永のうわさを聞くたび
に、領民や家臣たちに心の中でわ
びていました。



「城主になる前は、やさしい人だ
ったのに。城主になったとたん、
人が変わってしまった。なぜだろう」
お万は、盛永の気持がわかりません。



そんな盛永でしたが、奥がたのお
万とこどもの長五郎には、やさし
く接していました。
そして、もう一人、小姓の犬坊にも。



「どちらがほんとの盛永さまなの
かしら。城主だったら、まず領民
のことを考えてほしい」
お万は、心の中でそっとつぶやき
ました。
そして、「盛永さまが、領民のこ
とを考えられるやさしい人になれ
ますように」と祈りました。


             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。