赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花7


犬坊は、十七才。
心のやさしい、利口な少年でした。
どこかの城の若君といった感じの、
りりしい少年でした。
犬坊には、両親がいません。
遠縁の農家にひきとられ大きくな
りました。



犬坊は、城一番のやりと弓の名人。
三年前、城にやってきました。
城主の盛永に気にいられ、盛永の
身のまわりの世話をしています。



「犬坊」
「犬坊や」
盛永は、犬坊をわが子のようにか
わいがっています。
盛永は、どこへ行くにも、犬坊を
つれていきました。



「盛永さまは、わが子の長五郎よ
りも、小姓の犬坊の方がかわいい
のかしら」
お万は、盛永と犬坊の様子をみて、
心の中でつぶやきました。


             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。