赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花8


奥がたのお万も、みよりのない犬
坊を、弟のようにかわいがってい
ます。
犬坊も、お万が大好きでした。
両親のいない犬坊は、盛永を父の
ように、お万を母のように思って
いたのでしょうか。



若君の長五郎も、「兄ちゃん、兄
ちゃん」といって、犬坊をしたっ
ています。
犬坊も、長五郎を弟のようにかわ
いがっていました。



「犬坊と若様は、仲がいいのぅ。
ほんとの兄弟みたい」
家臣たちは、長五郎と遊んでいる
犬坊をみて、そういいました。


 
月見の宴がたけなわになった頃。
「殿様。殿様ー」
天守閣でみはりをしていた人が、
宴会場へとびこんできました。
「殿様。大変でございます」
「何ごとじゃ」
「敵が・・・敵がせめてきました」


              つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。