赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花9


「何、敵がせめてきたと。誰じゃ」
「隣の城の下条かと」
「下条がせめてきた?」
盛永は、一気に酒のよいがさめま
した。



「はい。下条の軍勢は、すでに城
の近くまできています」
「城の近くまできていると。早く
みんなに知らせろ」
盛永が、大声でどなりました。



「戦国の世だから、どんなことが
おこるかわからない」
盛永は、そう覚悟していました。
しかし、今夜の下条の急襲は、予
想外でした。
「ここ数年、下条とはいい関係が
続いていたのに。なぜだ」



盛永には、下条時氏がせめてきた
理由がわかりません。
「みなのもの、下条との戦じゃ。
いそいで、戦の準備をしろ」
盛永が、家臣たちにむかって、大
声でいいました。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。