赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花21


「犬坊。おまえは、わしの小姓に
なったことを、後悔しているのか」
「いいえ。後悔しておりません。
殿様にも、奥がたのお万さまにも、
かわいがっていただきましたから。
若君の長五郎さまとも仲良しにな
れましたし」



「それならいいが。わしは、今ま
で、領民のことも考えず、次から
次へと三つも城を作った。
重臣たちからも、領民のことを考
えなさいと何度も忠告された。



でも、わしは、その忠告を無視し
た。そんなわがままなわしをみて、
おまえは城へきたことを後悔して
いるのではないかと、心配してい
たのじゃ」



「私は、殿様の身近にいたので、
殿様の良い所も悪い所も知ってお
ります。
領民や家臣たちから、殿様のこと
を聞くたびに、なぜ領民のことを
思いやることができないのだろう
と、残念に思いました。



もう少し領民のことを考えてほし
い、そう思いました」
「犬坊、なぜそういってくれなか
ったのじゃ」


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。