赤い夕顔の花27
「犬坊」
「犬坊や」
盛永の声も聞こえます。
「兄ちゃん、兄ちゃん」
長五郎のかわいい声も聞こえてき
ました。
「犬坊、何をするの。あなたは、
あんなにかわいがってくれた人を、
やりでさし殺すつもり。
犬坊、そんなことをしてはいけま
せん」
奥がたのお万の声が、どこからか
聞こえたような気がしました。
しかし、犬坊は、その声を無視し
ました。
「盛永さまは、私ひとりのものだ」
そうさけぶと、犬坊は、盛永の心
臓をめがけてさしました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。