赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花34


長五郎は、ぶるぶるふるえています。
「こわかったのね。かわいそうに」
お万は、長五郎を再びしっかりだき
しめました。



茂みの間から城をみると、城がめら
めらと燃えています。
「城が燃えている。盛永さまや家臣
たちは、だいじょうぶかしら。
無事に城を逃げだすことができただ
ろうか」
お万は、盛永や家臣たちのことを、
心配しました。



あの城は、領民たちの年貢で建てた
城。
領民たちが、一つ一つ石を運こび苦
労してつくった城。
その城が、燃えている。
城主の盛永が、あれほどまでに執着
した城とは、一体何だったのだろうか。
お万は、燃えている城をみて、心の
中でつぶやきました。


             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。