赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花35


「一日も早く、戦のない平和な世
の中になりますように」
お万は、心の中で祈りました。
お万と長五郎は、下条の追手を逃
れ、一晩中山の中を歩きました。



東の空が、だんだんに明るくなっ
てきました。
「長五郎、疲れたでしょ。だいじ
ょうぶですか」
「だいじょうぶです」



「もうすぐ朝になりますよ。戸口
へ着いたら、そうべえさんの家へ
寄り、少し休ませてもらいましょ
うね」



「お母さま。そうべえさんて、誰
ですか」
「以前、城で働いていた人ですよ。
浪合の実家へ帰る時には、いつも
そうべえさんに送っていただいた
のよ」
お万は、そうべえのことを、長五
郎に話しました。


           つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。