赤い夕顔の花36
一時間後。
お万たちは、ようやくそうべえの
家にたどりつきました。
「ごめんください。そうべえさん
のお宅でしょうか」
「そうじゃが。どなたかな」
そうべえが顔を出しました。
でも、奥がたのお万だとわからな
いようでした。うす汚れた野良着
を着ているのですから、無理もあ
りません。
「そうべえさん。私、権現城の奥
がたのお万でございます」
「奥がたさま?」
「はい、お万でございます」
「あっ、奥がたさま。失礼しまし
た。奥がたさま。そんなかっこう
をして、どうなさったのですか」
そうべえが驚いて聞きました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。