赤い夕顔の花37
「昨夜、権現城は、下条の夜討ち
を受けました。
私たちは、浪合の実家に帰る途中
です。家臣と一緒だったのですが、
下条の追手を逃れているうちに、
はぐれてしまいました」
「奥がたさま。下条の夜討ちにあ
われたのですか。大変でしたのぅ。
殿様は、ご無事かな」
「さあ、わかりません。城も焼け
てしまったようで」
「何、城が焼けた?」
「はい。逃げてくる途中、城が燃
えていました。
そうべえさんに道案内をお願いし
たいと思い、ここへ寄りました。
昨夜から歩き通しなので、少し休
ませていただけないでしょうか。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。