赤い夕顔の花42
「奥がたさま。こんな時ですから、
しかたがありません」
そういって、そうべえは夕顔の花
を一つとり、長五郎にわたしました。
長五郎は、うれしそうに夕顔の花
をみています。
三人が庭先を立ち去ろうとした時、
「こらぁー、花どろぼうめ。待てー」
家の中から、大きな声が聞こえま
した。
そして、おばあさんがとびだして
きました。
おばあさんは、長五郎の手から、
夕顔の花をひったくりました。
長五郎は、何がおこったのかわか
らず、そうべえの肩にしがみつき
ました。
「申し訳ございません。ことわり
もなく、おたくの夕顔の花を一つ
いただいてしまいました。
失礼をお許しください」
お万が、おばあさんにわびました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。