赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花44


「私は、権現城の城主・盛永の奥
がた、お万でございます。
昨夜、下条の夜討ちにあい、浪合
の実家へ帰る途中です。
ことわりもなく、夕顔の花をとっ
たこと、どうかお許しくださいませ」
再び、お万は、おばあさんにわび
ました。



「何、権現城の奥がただと。あの
たわけた城主の妻か」
「おばあさん。口がすぎます。
夕顔の花をとったのは、奥がたで
はありません。このわしです。
奥がたには関係ありません」
そうべえが、おばあさんにいいま
した。



「ほんとのことをいって、何が悪
い。ひどい殿様だと、みんなうわ
さしているぞ。
殿様は、領民たちからきびしく年
貢をとりたて、三つも城をつくっ
たそうではないか。
城なんか一つあればいいのに、何
で三つも城をつくるのじゃ。わし
には、ようわからん」
おばあさんがいいました。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。