赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花48


お万たちは、「おさわがせし申し
訳ありません」と頭をさげ、その
家を去りました。



なんて心のせまいおばあさんなの
でしょう。
ことわりもなく夕顔の花をとった
ことは、悪いことです。



でも、庭先には、数えきれないほ
どたくさん花が咲いていたではあ
りませんか。
その中の一つを、幼いこどもにあ
げようというやさしい気持が、な
ぜおばあさんにはないのでしょう。



父親の悪口を聞いた長五郎は、ど
う思っただろうか。
夫の盛永は、領民たちからそんな
ふうに思われていたのか。
お万は、おばあさんのことばを思
い出し、そっと涙をふきました。


             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。