瑠璃寺の青獅子


    瑠璃寺の青獅子14


不動明王さま。これから、獅子
頭の荒彫りを始めます。
木の中から、元気な獅子があらわ
れますように」
男は、そう祈りました。
そして、滝にうたれ身を清めました。



小屋へもどった男は、木の前で何
度も深呼吸をし、心を静めました。
「獅子よ。これから、荒彫りを始
めるぞ」
そう声をかけ、男は木を彫り始め
ました。



「こっ、こっ、こっ」
木を彫る音だけが、小屋にひびき
ます。
のみがきれなくなると、滝へ行き
滝に打たれます。
そして、滝にかかる虹をみながら、
男は一心にのみを研ぎました。


            つづく



「瑠璃寺の青獅子」は、信州高森
町の瑠璃寺に伝わっている話をヒ
ントにして、みほようこが書いた
物語。



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