火とぼし山


     火とぼし山1


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20071128#p1



「次の日」「次の日」と押せば、
「火とぼし山」を続けて読むこと
ができます。



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にしてみほようこが書いた物語。



   「火とぼし山」より



「何の音だろう」
手長と足長は、あわてて岸にあが
りました。
月あかりに照らされてみえたもの、
それは湖を泳いでいる娘の姿でした。
娘は頭に荷物をのせ、一心に泳い
でいます。



「どこの娘じゃろ」
そっと近づいてみると、明神さま
から話を聞いていたきよでした。
「誰かと思ったら、きよか。
湖に氷がはれば、氷の上を歩く。
水がぬるめば、湖を泳いで渡る。



むてっぽうな娘じゃのう。
男だって、湖を泳いで渡る人は、
数えるほどしかいないだろう。
かよわいおなごが、こんな夜中に
湖を泳いで渡るなんて、わしには
信じられん」
足長が、あきれたようにいいました。