火とぼし山


     火とぼし山1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080315#p1



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒン
トにして、みほようこが書いた物語。



  「火とぼし山」より


きよは、意識がもどらないまま、
眠り続けました。
きよ。おまえは、次郎ひとすじじ
ゃったのぅ。
結婚する前のおなごが、たった一
人の男性を、十数年も思い続ける
なんてすごい。



普通のおなごは、「あの人が好き」
「この人が好き」と、いろいろな
男に心をうばわれるものじゃ。
次郎も、主人の姪に会うまでは、
きよのことが大好きだった。
でも、みよに会ってから、次郎の
心はだんだんに変わっていったの
だろう。



そして、次郎は、大きな農家のむ
こになりたいと思うようになった
のだろうな。
きよ。次郎のことは忘れるのじゃ。
心がはなれてしまった人に、いく
ら心をよせてみてもどうなるもの
ではない。



次郎のことは、忘れてしまいなさ
い。そして、一日も早く、きよに
ふさわしいすてきな人をみつけて
ほしい。
明神さまは、眠り続けるきよの顔
をみながら、心の中で話しかけま
した。