鹿になった観音さま


   鹿になった観音さま10


「和尚さま。その鹿は・・・」
「どうした。三郎さ」
「目の前から、突然消えてしまっ
たのです」
「なに? いとめた鹿が、消えて
しまったと。
三郎さ、夢でもみていたのではな
いのか」



「いいえ、和尚さま。
わしは、夢なんかみていません」
三郎は、きっぱりいいました。
「そうか」



「わしは、その鹿をさがして、山
の中をあちこち歩きました。
そして、大きな杉の木の根元で、こ
の観音さまをみつけたのです」



「ふしぎなことがあったものじゃのぅ。
それで、うちのタケルとチハヤは?」
「それが・・・和尚さま」


            つづく



     昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100215#p1



     初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100207#p1



「鹿になった観音さま」は、信州の伊
那谷にある「立石寺」に伝わっている
話をヒントにして、みほようこが書い
たもの。