火とぼし山


「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。



     火とぼし山1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080315#p1



    「火とぼし山」より


「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん
早かったね。どうしたの」
「私、湖を泳いできたの」
「えっ、湖を?」
次郎は、驚いて聞きました。



みると、きよの髪から、しずくが
ぽとぽととたれていました。
「私、一分でも早く、次郎さんに
会いたかったから、湖を泳いでき
たの」



「きよちゃんが、泳ぎが達者だと
いうことは、おらも知っている。
でも、夜中に湖を泳ぐなんて危険だ。
深みにはまって、おぼれたらどう
するの。死んでしまうよ。



きよちゃん、お願いだから、むち
ゃなことはしないでね」
次郎が心配していいました。
「だいじょうぶ、次郎さん。気を
つけて泳ぐから。



今夜は明るかったから、とても泳
ぎやすかったわ。
湖の水が、月に照らされきらきら
と光っていた。
とてもきれいだったわ」
きよがいいました。