火とぼし山


   火とぼし山16


東の空が、だんだんに明るくなっ
てきました。
「きよちゃん。ぼつぼつ帰らない
と、仕事に間に合わないよ。
一睡もしていないけれど、だいじ
ょうぶ」



「若いから、平気よ。
じゃあ、帰るわ。次郎さん、今度
はいつ会えるの」
「十日後、会おう」



「十日後なんて、いや。
私、毎晩でも次郎さんに会いたい。
だって、引っ越しをする前は、毎
日次郎さんと会っていたんだもの」
きよが、さみしそうにいいました。



「じゃあ、五日後に会おう。
きよちゃん。会えるのを楽しみに
しているよ」
きよは、心ひかれる思いで家に帰
りました。


          つづく



    昨日の分は、こちら。



http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100323#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。