火とぼし山19
「みしっ」
「ばりっ」
娘が歩くたびに、氷の割れる音が
します。
「あぶない」
「そっちへ行ってはだめ」
明神さまは、はらはらしながら、
娘の後をついていきました。
「娘よ。なぜ湖の氷の上を歩くの
じゃ。湖の氷は、まだ薄い。
湖に落ちれば、死んでしまうぞ。
このわしでさえ、今夜初めて氷の
上を歩いたのじゃ。
おまえは、ほんとにむてっぽうな
娘じゃのぅ」
明神さんは、心の中で娘に話しか
けました。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100326#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。