火とぼし山


    火とぼし山21


「きよちゃん。湖の氷は、まだ薄い。
氷が割れたら、どうするの。
こんな寒い夜、湖に落ちたら死ん
でしまうよ。
たのむから、危険なことはしない
でね」
次郎は、きよのことが心配でした。



「次郎さん。はい、お酒」
「お酒?」
「寒いから、次郎さんに飲んでも
らおうと思って、持ってきたの」
きよは、小さなとっくりを、次郎
にわたしました。



「うまいっ」
次郎は、うまそうに酒を飲みました。
「きよちゃん。この酒、温かい。
どうしたの」


          つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100328#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。