火とぼし山


   火とぼし山22


「次郎さんのことを思いながら、
歩いてきたの。それだけよ」
きよちゃんは、おらのことをこん
なにも思っていてくれる。
次郎は、幸せでした。



「ほんとに仲のいいカップルじゃ
のぅ。みていても、うらやましい
くらいじゃ。
娘の名前は、きよ。
青年の名前は、次郎というのか。



やさしそうな、感じのいい娘じゃ
のぅ。娘のあのうれしそうな顔。
なんてすてきな笑顔だろう」
娘をみとどけ安心した明神さまは、
下諏訪の奥さんのやしきへいそぎ
ました。



「ただいま」
「おかえりなさい。遅いから心配
していたのよ」
奥さんが、ほっとした顔でいいま
した。  


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100329#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。