火とぼし山


   火とぼし山28


きよちゃんの気持は、うれしい。
おらも、きよちゃんが大好きだ。
でも、次郎は、心のどこかで不安
を感じていました。
何に対する不安なのか、次郎にも
わかりませんでした。



次郎は、きよのそばにいると、ほっ
とします。
そして、心がなごみました。
「きよちゃんて、ふしぎな人だな」
次郎は、きよと会うたびに、そう思
います。



次の朝。
「次郎さん。今度は、いつ会えるの」
きよが聞きました。
「今、野良の仕事が忙しい。
だから、今度会うのは、一カ月後かな」
「一カ月後?」



「そう、一カ月後」
「一カ月も、次郎さんに会えないの。
そんなのいや。私、毎晩でも次郎さん
に会いたい」
きよは、自分の気持を伝えました。


              つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100406#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。